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60になる母が20年ほど前、

段ボール箱いっぱいの、古い木綿の端切れと出会ったのが、

そもそもの始まりです。

「なんやもう、汚いもんを家の中に持ち込んでくるなぁ。」

と、眉間にしわを寄せていた私が、

同様に目覚めたのは、20代半ばを過ぎた頃です。

 

9年前の春、母が古布、私が古着(洋服)を扱う店を、

自宅のそれぞれの部屋でOPENしたのですが、

その半年後の秋、私は1冊の本に出会ったのです。

ある方の古布を用いた作品集でした。

母にどうしても見せたくて迷わず買ったのですが、見入ってしまったのは私でした。

その時の驚き、感嘆、衝撃は、どう表現したらよいでしょう。

言いようのない驚きでした。

目をひっつけたり、傾けたり、虫眼鏡で覗いてみたり・・・。

何度見たかわかりません。

使われている布、配色、絵心、そして技術。

何度ため息をついたかしれません。

私にとって間違いなく、『運命の1冊』との出会いでした。

 

これを機に、恐ろしいスピードで私は古布の世界へのめり込んでいきました。

藍木綿の温かさ、力強さ。異国情緒いっぱいの更紗。

華やかでやわらかな縮緬、錦紗。

などなど、眺めて触れているだけでも十分楽しいのですが、

これら布で、袋ものやお細工ものを作る時間は、

誰にも邪魔されたくない至福のひとときです。

 

また、古布と同じくらい心を奪われたのが昔着物です。

粋な御召し。モダンな銘仙。重厚な紬。

洒落心いっぱいの羽織。緻密な織りの帯。

などなど2枚と同じもののない、美しく上質な着物や小物達によって、

「着たい!」気持ちが沸騰し、着付けを習いました。

更に更に、「着たい!」気持ちは、「自分で仕立てて着たい!!」気持ちに発展し、

和裁を習うまでに。

 

『運命の1冊』は、

私に針を持つ楽しさと、着る喜びを教えてくれました。

そして、昔の人々の感性と技術の高さ、日本の文化や伝統を勉強する機会を与えてくれました。

と、大層に言いましても、私もまだまだで、毎日修行の身です。

いつか、『運命の1冊』の作家さんのようになりたいと思っています。

 

今現在、既にこの世界の楽しさを、満喫されている方はたくさんいらっしゃると思います。

そのような方々はもちろん、まだご存知でない方にご覧いただきたく、

このホームページを作成しました。

お立ち寄りの際は、何かメッセージをいただけると嬉しいです。

そしてぜひ、当店にもいらしてください。

心和む古布たちと、お待ち申し上げております。

長くなりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。

 

 平成23年3月  手作り古布うさぎや 岡田静江

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